006・電子カルテ 施設外利用と通信の危険性
厚労省が計画をしているデータヘルス改革に沿って、在宅、地域医療、患者個人との連携がますます鍵となります。
かかりつけとしてロケーションフリーなシステムの構築は必須になります(電子カルテとクラウドの相性 参照)
目次
1.必要とされる背景

2010年以前は降の開業ではクラウド型の電子カルテ・レセコンが主流になりつつありますが、それまではそのものの安全性、通信環境・速度の問題もあり全く受け入れられませんでした。同時期に医療分野における「クラウド解禁」となりますが、殆ど利用者はいませんでした。
2011年の東日本大震災以降、BCP対策(地震、津波、大雨、大雪などの自然災害や事故、停電など緊急事態時の施策)として、重要なカルテデータを施設外のデータセンターで管理・運用をする「クラウド」が評価されたことで、クラウド開発を得意とする新規ベンダーも参入が増えたことで認知が大きく進みました。
2019年のWithコロナ時代には、遠隔でカルテが扱えるロケーションフリーのシステムを取り入れる医療機関が増えています。
2021年5月に医療法改正が公布、2023年4月施行予定の「診療報酬改定」「外来医療の機能の明確化」中で、外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能が実態に即した適切な見直しが計画されています。
第8次医療計画

・外来機能の明確化・連携について、医療を受ける側の意識も変えることが必要で、そのためのアプローチも重要。
・かかりつけ医について、人によってイメージが違うことが問題。かかりつけ医とはこのようなものという整理が必要。
・外来医療に関して、休日・夜間の病院救急外来のいわゆるコンビニ受診が働き方改革の阻害要因であり、救急医療体制におけるかかりつけ医機能の不足への対応や医療を受ける方の理解が必要。
・地域医療構想と外来機能報告、在宅医療は一連のもの。外来機能報告については、かかりつけ医もある程度明確になるよう、在宅医療、グループ診療、オンライン診療などの機能も見えるような報告にすることが重要。
・かかりつけ医については、その医師が外来診療や在宅医療、オンライン診療などどのような機能をもっていて、国民一人一人のニーズとうまくマッチするかどうかが重要。
出典:厚生労働省「外来機能報告等の施行に向けた検討について」 より 抜粋
外来機能の考え方、かかりつけ医に関する議論
地域医療と連携、在宅医療の推進の施策において、診療所以外での利用、データ連携が加速する事は間違いありません。一方で、「かかりつけ」については言葉のイメージと実際の機能について、より細かい整理が必要と考えます

コロナ禍以前との比較
コロナ禍以降2020年と以前の2018年を在宅医療に限定して比較すると、点数平均で約1.4倍、届出件数が1.13倍伸びており、在宅ニーズの高さが分かります。
■診療行為別(入院外)・在宅医療のみ
点数/件 点数/日
2020年 126.9点 86.0点(vs2018 ×1.35)
2019年 97.7点 64.9点
2018年 93.7点 60.4点
2017年 89.5点 56.9点
※令和2年社会医療診療行為別統計の概況より 厚生労働省
一方 在宅医療の実施が如何に大変な事か、調査の結果も出ています。
- 24時間の往診体制をとること
- 医師自身の体力
- 24時間連絡を受けること
- 体制確保(地域連携)
「在宅患者に対する24時間対応」は実施してる診療所でも、約半数は負担が大きいと回答

出典:かりつけ医機能と在宅医療についての診療所調査(概要版)より 2017年2月15日公益社団法人 日本医師会
2018年から2年間で、新に約550件の医療機関が在宅時医学総合管理料への届け出を行っています。
■在宅時医学総合管理料 届出医療機関数(診療所)
2020年 22,606件(vs2018 ×1.02 +556件)
2019年 22,300件
2018年 22,050件
2.施設外の利用目的
- 自宅:夜間・休日など(患者サマリー、病名、処方歴、検査数値)確認用
- 患者のご自宅等 訪問診療:計画的・定期的にご自宅等に訪問し、医師が診療
- 往診:急変の際など計画外で、ご自宅などに訪問し、医師が診療
- かかりつけ:ご本人の状態に応じ適切なサービスを他の医療従事者等へ指示


項目 | 概要 |
訪問診療 | 通院が困難な方のご自宅に訪問し、診療を行います |
訪問歯科衛生指導 訪問歯科診療 | 通院が困難な方のご自宅に歯科医師・歯科衛生士が訪問し、歯の治療や入れ歯の調整等を通じて食事を噛んで飲み込めるよう支援を行います |
訪問看護 | 看護師等がご自宅に訪問し、安心感のある生活を営めるよう処置や療養中の世話等を行います。 |
訪問薬剤管理 | 通院が困難な方のご自宅に薬剤師が訪問し、薬の飲み方や飲み合わせ等の確認・管理・説明等を行います。 |
訪問によるリハビリテーション | 通院が困難な方のご自宅に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問し、運動機能や日常生活で必要な動作を行えるように、訓練や家屋の適切な改造の指導等を行います。 |
訪問営業食事指導 | 管理栄養士がご自宅に訪問し、病状や食事の状況、栄養状態や生活の習慣に適した食事等の栄養管理の指導を行います。 |

出典:厚生労働省「在宅医療に関する推進について」
3.持出し準備と注意

カルテ端末に求めたい機能
施設の外に持ち出すノートパソコン、タブレットですが、個人情報の流出リスクを考えると、必要最小限の機能に抑えるべきです。
更に端末を持ち出せば利用できるというものではありません。
必要なソフトのインストール、設定、通信環境の準備、通信費なども必要です。
オンプレミスタイプのであれば、データの同期を取る、閲覧のみなど持ち出す為の条件も増えてきます。
利用目的を明確に持ち、必要な機能と準備、費用について検討する事も必要です。
Withコロナでは端末の追加などで補助金が利用できるケースもあります(参考:なぜ補助金を利用しないのか)。
- カルテの検索・確認ができる
- カルテを入力・修正できる
- オンライン診療が実施できる
- 外来(訪問診療)予約状況が確認できる
接続に関する注意点
モバイルルーターによるWi‐Fi接続が一番のおすすめです(速度◎料金◎セキュリティ◎)
頻度が少ない、いざというときにはスマホをUSB接続でテザリングも可能です。
- Wi-Fi 複数接続(速度〇 料金× 安全性〇)※バッテリー消耗高
- Bluetooth 複数接続(速度△ 料金× 安全性〇)※バッテリー消耗低
- USB 1対1 (速度◎ 料金× 安全性◎)※充電できる
Wi-Fi利用の注意
- 公衆Wi-Fi(フリー)
- ホテル・駅などの公共機関や店舗が提供しているサービス。提供元で指定されたSSIDとパスワードを利用。
不得意多数が利用する為、悪意のある利用者からの侵入リスクあり
- ホテル・駅などの公共機関や店舗が提供しているサービス。提供元で指定されたSSIDとパスワードを利用。
- 公衆Wi-Fi(有料)
- 携帯電話会社などが提供するケースが代表的。利用方法、リスクはフリーと同様。利用者が限定しており、回線も安定している点が異なる
- 不明なWi-Fi
- 以前は多く存在。不正侵入を目的」に網に誘い出す為の仕掛け。リスクは非常に高い。公衆Wi-Fiと同じSSIDやパスワードを利用する「偽装」を見抜くのは困難。自動的に接続する設定解除をおすすめ
その他の注意点
電子カルテを施設外に持ち出すとき、様々な危険にさらされます。
- 盗難(自動車等への置き忘れ)
- 落下
- 水没
ログインなどアカウント認証、ウィルス攻撃への対策は言うまでもありませんが、物理的な危険に対しては「動産総合保険」が効果的です。事業用の什器・備品、機械、器具 等の動産について、運送中や使用中の破損や盗難など、偶然な事故(天災を除く)損害を補償してもらえます。
動産総合保険:リース各社で取り扱いをしていますので、詳細は約款などご確認下さい。
