203・データヘルス改革 電子処方箋
目次
1.電子処方箋とは

電子処方箋とは、オンライン資格確認等システムを拡張し、現在紙で行われている処方箋の運用を、電子で実施する仕組み。オンライン資格確認等システムで閲覧できる情報を拡充し、患者が直近処方や調剤をされた内容の閲覧や、当該データを活用した重複投薬等チェ ックの結果確認が可能に
出典:厚労省 第150回社会保障審議会医療保険部会 議事次第 より
(令和5年(2023年)1月~運用開始)

導入意義
電子処方箋により、医療機関や薬局・患者間での処方/調剤薬剤の情報共有や、関係者間でのコミュニケーションが促進されることで、質の高い医療サービスの提供、重複投薬等の抑制、業務効率化を実現。医療機関や薬局にとって質の高い診察・処方や調剤・ 服薬指導といったメリットがあるが、患者(被保険者)にとっても、健康増進による生産性向上、オンライン診療・服薬指導の利用促進による医療アクセスの更なる向上、さらに医療費削減による医療保険の持続性を高めることにより、大きなメリットとなる
出典:厚労省 第150回社会保障審議会医療保険部会 議事次第 より

期待される効果
・調剤を受け取る際に紙の持参が不要等の利便性の向上
出典:厚労省 第150回社会保障審議会医療保険部会 議事次第 より
・処方内容を電子化することによる医療機関や薬局間の迅速な情報伝達が可能となる。
・電子化された処方情報をリアルタイムで共有する等により、飲み合わせ確認や服薬指導、重複投薬や併用禁忌の薬剤投与の防止、ポリファーマシー防止(多剤等による有害事象の防止等)等に活用でき、被保険者にとってより適切な薬学的管理が可能となる。
医療機関、薬局における主なメリット
出典:電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)より
- 医療機関からの電子的な処方情報をもとに、薬局で処方内容の照会や後発医薬品への変更などを含む調剤業務が行われ、その結果を医療機関に戻し、次の処方情報の作成の参考にするという情報の有効利用
- 医療機関・薬局間での情報の共有が進むことで、医薬品の相互作用やアレルギー情報の管理に資することが可能となり、国民の医薬品使用の安全性の確保など公衆衛生の向上にも資する。
- 医療機関では、紙の処方箋の印刷に要するコストが削減される。紙の処方箋の偽造や再利用を防止
- 薬局から医療機関への処方内容の照会の結果等の伝達や、先発品から後発品に調剤を変更した際の伝達がより容易になり、医療機関でも患者情報のシステムへの反映が容易になる。後発品の使用促進のため、一般名処方や後発品への変更調剤が今後も増加することを踏まえれば、処方した医師・歯科医師への調剤結果(患者に交付された薬剤の種類、用法・用量等)の伝達が容易になることは、重要
- 遠隔診療の際、処方箋の原本を電子的に受け取ることが可能
- 調剤に関する入力等の労務が軽減され、誤入力が防止される。調剤済みの 紙の処方箋の保管スペース等を削減
- 電子版お薬手帳等との連携等により、医療機関や薬局の連携や処方内容の 一元的・継続的把握の効率化等に資する
患者や家族における主なメリット
出典:電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)より
- 遠隔診療の際、処方箋の原本を電子的に受け取ることが可能となり、それによって医療機関での待ち時間が短縮されることが期待される
- 薬局が患者に調剤した情報を電子的に提供し、患者自らが実際に調剤された情報を電子的に保存・蓄積し、服薬情報の履歴を管理できる
- 電子版お薬手帳等との連携等によって、患者等が自ら保存・蓄積した調剤の情報を、他の医療機関等に自らの意思で提示することが、紙媒体よりも容易になる。生活習慣病など比較的長期にわたって治療が必要な疾病では、生活環境の変化などにより医療機関や薬局を変更した場合でも、診療の継続性の確保が容易になる。
- 患者が公共性のある機関(自治体等)に情報を預ける等の方法により、例えば、在宅医療、救急医療及び災害時に、医療関係者が患者の服用している薬剤を知ることが可能
留意点
出典:電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)より
- 、電子処方箋の不正な複製や改ざんを防止する必要があるが、地域医療情報連携ネットワークなど、利用する医療機関と薬局が特定された、セキュリティの高い専用のネットワークサービスであれば、安全性を確保できる
- メール等では、中継する複数のサーバを指定できず、メールサーバ間の通信品質やセキュリティレベルにばらつきがあり、送信元や送信先を偽装する「なりすまし」や、送信データの「盗聴」や「改ざん」、通信経路への「侵入」や「妨害」等の脅威から保護することが困難である。
- 医療情報の安全なやりとりを完全には確保できないので、電子メールやSNSによる方式は本ガイドラインでは採用しない
- 複数の電子処方箋管理サービスの運用が行われる場合、薬局が複数の電子処方箋管理サービスを活用することも想定される。このため、電子処方箋の普及段階から、電子処方箋管理サービスの標準化とともに、医療機関、薬局、電子処方箋管理サービスの運営主体間の相互運用性を確保する必要がある
電子署名の活用
出典:電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)より
記名・押印・署名は、処方箋を発行した医師・歯科医師と調剤した薬剤師の責任を明確にするためのものであり、処方箋が電子化されても、引き続き、必要とされている。
- 処方箋の電子化の実証事業でも既に運用されていることから、本ガイドラインにおいても、HPKI の電子署名を推奨
- 安全管理ガイドラインに基づき、電子処方箋への電子署名には、タイムスタンプを付与する仕組みとする
医師・歯科医師は、患者に交付する処方箋に、患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、用量、発行年月日、使用期間、病院・診療所の名称・所在地又は医師・歯科医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない
出典:医師法 施行規則第 21 条、歯科医師法施行規則第 20 条
薬剤師は、調剤したときは、処方箋に、調剤済みの旨(当該処方箋が調剤済みとならなかったときは調剤量)、調剤年月日等を記入し、記名押印又は署名しなければならない。
出典:薬剤師法第 26 条
2.電子処方箋の運用例
出典:電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)より

運用プロセス
- 1.受診
- 2.医療機関で医師が電子処方箋を作成
- 3.4.医療機関が、電子処方箋が管理されている「電子処方箋管理サービス」にアクセスコードと確認番号の発行を要求し、作成した電子処方箋を送信し、登録
- 5.医療機関がアクセスコードと確認番号を患者に公布
- 6.患者が薬局でアクセスコードと確認番号を提示
- 7.8.9.薬局は「電子処方箋管理サービス」に、アクセスコードと確認番号をもとに電子処方箋を要求。受信した電子処方箋をもとに調剤し、患者に指導・薬剤を交付
- 10.薬局の薬剤師は、調剤結果を作成し「電子処方箋管理サービス」へ送信・登録
電子お薬手帳との連携確保
出典:電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)より
患者が電子化された処方や調剤の内容等を可視化して知り、活用するためには、電子版お薬手帳等との連携等が不可欠である。お薬手帳は、患者本人のものであり、患者や医療関係者がいつでもその情報を容易に確認することができ、以下の意義や役割がある。医療機関や薬局は、自ら患者に情報を提供することや、電子処方箋管理サービスを通じ、患者からの登録の依頼に基づき、調剤の結果を電子版お薬手帳等の運営主体に送信できるようにするなど、電子版お薬手帳等との連携等の確保に取り組み、処方箋の電子化に伴う、情報の電子化のメリットを患者が享受できるようにする必要がある。
…
(※)電子版お薬手帳を運用する上での留意事項については、「お薬手帳(電子版)の運用上の留意事項について」(平成27年11月27 日薬生総発1127 第4号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知)で示されているので、電子版お薬手帳と連携等する電子処方箋管理サービスの運営主体においては、参照されたい。
厚生労働省は、マイナポータルで患者の薬剤情報が閲覧可能となったことを踏まえ、10月25日付で「電子版お薬手帳の運用上の留意事項」を一部改正されています。お薬手帳に取り込んだ情報だけでは必要な情報が不足している場合を考慮し、薬局が必要な情報を引き続き患者に提供することなどを求めています。
3.利用開始に向けたスケジュール
電子処方箋は、令和5年1月より運用が開始されます。令和4年度から対応が必要な、準備作業の内容や、作業スケジュールについては、今後、順次医療機関等ポータルサイト等にてご案内していく予定です。なお、利用にあたり、オンライン資格確認を導入している必要があるため、まだ導入していない場合は、お早めに準備をお願いします。
出典:厚労省 「電子処方箋 概要案内(令和3年11月)」 より

オンライン資格確認の導入に必要な作業:オンライン資格確認の導入に向けた準備作業の手引き』をご覧ください
FAQ
・患者はマイナンバーカードがないと、電子処方箋を発行できないのですか?
患者が健康保険証を利用する場合も電子処方箋を発行できるよう、マイナンバーカードと健康保険証とで電子処方箋の利便性が異なる点等を考慮しなが ら構築予定です・オンライン資格確認と同様に、補助金はありますか?
補助に関しては現在検討中となります
・電子処方箋を始めるには、まず何をすればよいですか?
利用にあたり、オンライン資格確認を導入している必要があるため、導入していない方は、お早めに準備をお願いします。『オンライン資格確認の導入に向けた準備作業手引き』
出典:厚労省 「電子処方箋 概要案内(令和3年11月)」 より
その他の具体的な手続き等については、順次、医療機関等向けポータルサイトに掲載を予定しています。