207・オンライン診療 実証レポート
オンライン診療
実態調査(総務省)と算定状況
総務省にオンライン診療の実証結果がレポートされているので概要をご紹介したいと思います。
異なる性質を有する3つのフィールドに、それぞれ別のオンラインによる診療システム利用し、各フィールド特有のモデルで検証しています。
・「curon(クロン)」(株式会社 MICIN)
・「セコムVitalook(バイタルック)」(セコム医療システム株式会社)
・「CLINICS」(株式会社メドレー)
詳細は出典をご確認いただきますようお願いします。
出典:総務省「 ICT利活用の促進 > 医療・介護・健康分野の情報化推進」より
出典:総務省「 オンライン診療の普及促進に向けたモデル構築に係る調査研究(令和元年度)
報告書概要 令和2年5月」より
オンライン診療 実態と今後について
目次
1.調査について
概要
項目 | 病院①500床以上 | 病院②200床未満 | 診療所 |
モデル | 勤労世代の糖尿病患者 | 訪問看護師による在宅診療 | 来院が困難な小児神経疾患 |
オンライン診療 | curon(クロン) | セコムVitalook | CLINICS |
IOT機器等 | 血糖値計、血圧計、体重計 等 | 心電計、パルスオキシメーター、体温計、血圧計、体重計、電子聴診器 | なし |
備考 | 糖尿病疾患管理が必要 | 疾病管理が必要な在宅・高齢者患者 | 遠隔地から受診する患者や来院が困難 |
2.患者アンケートによる有効性評価(3フィールド合算)
オンライン診療を受診しての感想(n=63)
項目 | 満足: 降順↓ 人数(割合) |
概ね満足 人数(割合) |
満足+概ね 合計割合 |
医師と問題なくコミュニケーションが取れた | 43人 (68.3%) |
13人 (20.6%) |
88.9% |
時間を効率的に使えた | 38人 (60.3%) |
18人 (28.6%) |
89.1% |
受診にかかる身体的な負担が軽減された | 36人 (57.1%) |
16人 (25.4%) |
82.5% |
医師に相談しやすかった | 35人 (55.6%) |
20人 (31.7%) |
87.3% |
計画的に診療予定を組めた (継続しやすかった) | 31人 (49.2%) |
26人 (41.3%) |
90.5% |
受診にかかる経済的な負担が軽減された | 28人 (44.4%) |
24人 (38.1%) |
82.5% |
処方や処置について必要な指導・ 指示を得やすかった | 27人(42.9%) | 22人(34.9%) | 77.8% |
■オンライン診療の満足度
大変満足 人数(割合) | 概ね満足 人数(割合) | 大変+概ね満足 割合 |
31人(49.2%) | 23人(36.5%) | 85.7% |
■対面診療と比較した今回のオンライン診療の満足度
オンラインが良い 人数(割合) |
対面と変わらない 人数(割合) |
オンライン肯定 人数(割合) |
対面が良い 人数(割合) |
12人(19.0%) | 29人(46.0%) | 41人(65.0%) | 11人(17.5%) |
オンライン診療のメリット、課題について
- 患者側のメリットとしては、受診における経済的・身体的負担が軽減されることに加え、対面よりも画面越しの方が医師と話しやすいという患者の意見も挙がっている。
- 医療機関側のメリットとして、「疾病によっては、普段の生活を見ることにより効果的な治療を行うことができる」、「全国の医療機関から紹介が来る等、オンライン診療を実施することにより、当該医療機関の評判が向上する」などの意見があった。
- 医療機関側の課題として、何れの医療機関においても、オンライン診療を実施するにあたり、診療報酬・適用要件等の面から医療機関の経済的負担が大きいとの意見が挙げられた。
オンライン診療の適切な実施に関する指針(改訂版)への対応・意見
- 保険診療におけるオンライン診療はある程度信頼関係のできている医師・患者間で行うことが前提であるため、本人確認の要件は実態に沿わないのではないか。
- 医師側の診療場所については、診察室に準じた個人情報を守れる区画で実施する必要がある、などの意見が挙げられた
出典:総務省「 ICT利活用の促進 > 医療・介護・健康分野の情報化推進」より
出典:総務省「 オンライン診療の普及促進に向けたモデル構築に係る調査研究(令和元年度)
報告書概要 令和2年5月」より
3.セコムVitalook 成果と課題
・IOT機器 心電計、パルスオキシメーター、体温 計、血圧計、体重計、電子聴診器
概要
項目 | とても思う 人数(割合) |
概ね思う 人数(割合) |
そう思う 合計割合 |
時間を効率的に使えた | 16人(64.0%) | 9人(36.0%) | 100% |
計画的に診療予定を組めた(継続しやすかった) | 12人(48.0%) | 13人(52.0%) | 100% |
受診にかかる身体的な負担が軽減された | 17人(68.0%) | 6人(24.0%) | 92.0% |
医師と問題なくコミュニケーションが取れた | 17人(68.0%) | 6人(24.0%) | 92.0% |
医師に相談しやすかった | 11人(44.0%) | 12人(48.0%) | 92.0% |
受診にかかる経済的な負担が軽減された | 10人(40.0%) | 13人(52.0%) | 92.0% |
処方や処置について、必要な指導・指示を得やすかった | 6人(24.0%) | 13人(52.0%) | 76.0% |
■対面診療と比較した今回のオンライン診療の満足度(n=25)
オンラインが良い 人数(割合) |
対面と変わらない 人数(割合) |
オンライン肯定 人数(割合) |
対面が良い 人数(割合) |
6人(24.0%) | 11人(44.0%) | 17人(68.0%) | 5人(20.0%) |
■今後のオンライン診療利用移行(n=25)
定期的に利用 人数(割合) |
必要に応じて利用 人数(割合) |
オンライン肯定 人数(割合) |
利用したくない 人数(割合) |
9人(36.0%) | 15人(60%) | 24人(96.0%) | 1人(4%) |
バイタル取得時の流れ(概要)
- 訪問看護師が心電計・パルスオキシメーター・体温計・血圧計を持参し、患者宅を訪問
- オンライン診療実施前に各センサーを使用して患者のバイタルデータを測定
- バイタルデータは患者側の端末(タブレット等)へBluetooth接続で送られ、オンライン診療システム事業者のサーバに保存される
- (電子カルテとオンライン診療システムの連携後)バイタルデータを電子カルテに転記可能
その他課題・活用可能性
- バイタルセンサーに電子聴診器を追加し、診察への活用に向けトライアルを行っている
- これまでは看護師が患者のバイタルデータを手書きでメモし、病院に戻ってからカルテ等に記載していた。バイタルデータをオンライン診療のシステムで収集し、電子カルテにデータをコピー&ペーストできるようになったことで、転記ミス等がなくなり、看護師の業務負担も減るため効率化につながる
- 訪問看護時に、患者の様子がいつもと違う(脈が速いなど)時に、心電波形をリアルタイムで病院へ伝送しつつ、テレビ電話で医師へ相談し指示を仰ぐなど、臨機に活用することができれば、現場を大きくサポートするツールになる可能性がある(訪問看護時には10回に1回程度、医師へ患者の容態が思わしくない等で相談したいケースがある)
出典:総務省「 ICT利活用の促進 > 医療・介護・健康分野の情報化推進」より
出典:総務省「 オンライン診療の普及促進に向けたモデル構築に係る調査研究(令和元年度)
報告書概要 令和2年5月」より
4.「CLINICS」成果と課題・IOT機器なし 診療所
小児神経疾患を対象に、全国の難病を抱える患者を対象としたオンライン診療を実施
概要
項目 | とても思う 人数(割合) |
概ね思う 人数(割合) |
そう思う 合計割合 |
受診にかかる経済的な負担が軽減された | 10人(66.7%) | 4人(26.7%) | 14人(93.4%) |
受診にかかる身体的な負担が軽減された | 10人(66.7%) | 3人(20.0%) | 13人(86.7%) |
時間を効率的に使えた | 13人(86.7%) | 0人(0.0%) | 13人(86.7%) |
医師と問題なくコミュニケーションが取れた | 14人(93.3%) | 0人(0.0%) | 14人(93.3%) |
医師に相談しやすかった | 14人(93.3%) | 0人(0.0%) | 14人(93.3%) |
計画的に診療予定を組めた(継続しやすかった) | 12人(80.0%) | 2人(13.3%) | 14人(93.3%) |
処方や処置について、必要な指導・指示を得やすかった | 12人(80.0%) | 2人(13.3%) | 14人(93.3%) |
学校の職員と一緒に診察を受けることができた | 1人(6.7%) | 1人(6.7%) | 2人(13.4%) |
学校の職員と連携がしやすかった | 1人(6.7%) | 1人(6.7%) | 2人(13.4%) |
■対面診療と比較した今回のオンライン診療の満足度(n=25)
オンラインが良い 人数(割合) |
対面と変わらない 人数(割合) |
オンライン肯定 人数(割合) |
対面が良い 人数(割合) |
2人(13.3%) | 8人(53.3%) | 10人(66.6%) | 2人(13.3%) |
■今後のオンライン診療利用移行(n=25)
定期的に利用 人数(割合) |
必要に応じて利用 人数(割合) |
オンライン肯定 人数(割合) |
利用したくない 人数(割合) |
12人(80.0%) | 3人(20%) | 15人(100.0%) | 0人(0%) |
実証実験による成果
- オンライン診療を実施することで、遠方かつ疾患の特徴により移動が困難な患者及び家族の来院負担が大
きく緩和されるとともに、患者本人・家族ともに対面診療と変わらない満足度であることを確認
実証フィールドにおける課題
- オンラインでのカンファレンスに家族以外の関係者(学校関係者等)が同席することにより、患者の状態や日常生活の様子等の共有が可能となるメリットがある一方、第三者の参加についての本人確認の徹底(事前の同席確認が必須)や、患者の診察自体とは別途に実施する等、患者プライバシーへの配慮が必要となる。(第三者の同席が前提となるケースについては、第三者の本人確認等の基準や第三者を含めたオンライン診療実施時の留意点についてオンライン診療指針等で示される必要があると考えられる。)
- 処方箋を郵送して患者の手元に届くまでのタイムラグが生じるため、電子処方箋の普及や、地域の薬局・薬剤師会との連携体制の構築が必要と思われる。
- 患者の情報をより詳細に把握するためには、地域のかかりつけ医との連携が有効と思われるが、現状においては、かかりつけ医への経済的負担(診療報酬が発生しないこと)や時間的制約(日常の診療業務の中でオンライン診療実施医師との予定を合わせることが難しいこと)から、かかりつけ医同席のオンライン診療を実施するのは難しく、医師間でスムーズに情報連携できる仕組 みが必要である
5.オンライン診療料の算定状況
対面診療の実施体制
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第507回)R3.12.22」より
見直しのポイント
- 初診からのオンライン診療は原則かかりつけの医師が行うものであり、対面診療が必要になった場合には当該かかりつけの医師が行うことが原則。
- 例外として、かかりつけの医師以外の医師が初診からのオンライン診療を行うのは、
- かかりつけの医師がオンライン診療を行っていない場合や、休日夜間等で、かかりつけの医師がオンライン診療に対応できない場合
- 患者にかかりつけの医師がいない場合
- かかりつけの医師がオンライン診療に対応している専門的な医療等を提供する医療機関に紹介する場合(必要な連携を行っている場合を含む)や、セカンドオピニオンのために受診する場合
- が想定される。その際、オンライン診療の実施後、対面診療につなげられるようにしておくことが、安全性が担保されたオンライン診療が実施できる体制として求められるのではないか。
- オンライン診療後の対面診療については、
- かかりつけの医師が存在する場合には、オンライン診療を行われた患者が、オンライン診療を行った医師からかかりつけの医師に紹介され実施されることが望ましい。
- かかりつけの医師がいない場合等においては、オンライン診療を行った医師が対面診療を行うことが望ましいが、患者の近隣の対面診療が可能な医療機関に紹介されることも想定されるのではないか(オンライン診療を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、より適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる)。
- なお、オンライン診療は直接の対面診療を適切に組み合わせて行うことが原則である。
対面診療の実施体制
- 「かかりつけの医師」以外の医師が診療前相談を行った上で初診からのオンライン診療を行うのは、
- 「かかりつけの医師」がオンライン診療を行っていない場合や、休日夜間等で、「かかりつけの医師」がオンライン診療に対応できない場合
- 患者に、「かかりつけの医師」がいない場合
- 「かかりつけの医師」がオンライン診療に対応している専門的な医療等を提供する医療機関に紹介する場合(必要な連携を行っている場合、D to P with Dの場合を含む。)や、セカンドオピニオンのために受診する場合
- が想定される。その際、オンライン診療の実施後、対面診療につなげられるようにしておくことが、安全性が担保されたオンライン診療が実施できる体制として求められる。
- オンライン診療後の対面診療については、
- 「かかりつけの医師」がいる場合には、オンライン診療を行った医師が「かかりつけの医師」に紹介し、「かかりつけの医師」が実施することが望ましい。
- 「かかりつけの医師」がいない場合等においては、オンライン診療を行った医師が対面診療を行うことが望ましいが、患者の近隣の対面診療が可能な医療機関に紹介することも想定される(ただし、オンライン診療
を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる。)。 - 初診からのオンライン診療を行う場合については、診察の後にその後の治療方針(例えば、次回の診察の日時及び方法並びに症状の増悪があった場合の対面診療の受診先等)を患者に説明する。
■オンライン診療料の算定状況等
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた時限的・特例的対応である令和2年4月、5月をピークに以降は減少し安定的に推移している。
■システムの利用に係る患者からの費用徴収について
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第507回)R3.12.22」より